赤い袖先の原作(小説)をネタバレ!ドラマや歴史との違い・共通点も徹底解説!全ての始まりは水原にあった!?
冬ソナブームの頃には興味がなかった韓ドラにハマって数年。
時代劇が好き。
そして復讐ドロドロ系にツッコミを入れたり、ラブロマンスにときめいたりの毎日です。
読み書きは今ひとつの耳だけハングルなので、最初に覚えた韓国語は、
「~씨(~ッシ)」「아이고(アイゴー)」「어머(オモ)」の3つ。
連絡先:whitelife112226@gmail.com
ソウル生まれの作者カン・ミガンさん。
幼い頃から、数多くの引っ越しをされてきたそうです。
その中でも、”水原(スウォン)での体験から、高校1年生の時に原案を書いた”と伝えられるものが、遠くない未来に人気ドラマの原作になるとは、予想もできなかったことでしょう。
日本文学にも精通し、瑞々しい感性をもつ彼女が8年の歳月をかけて書き上げた「赤い袖先」
今回は、史実と美しくも悲しい想像の調和が織りなす世界を、紹介します。
もくじ
赤い袖先の原作(小説)をネタバレ!
【小説『#赤い袖先』中・下巻本日発売!】今日9/21は、#ジュノ(2PM)主演のロマンス史劇『赤い袖先』の原作小説日本語版、ついに全巻刊行です!ぜひ書店やネットショッピングで! とくに下巻は涙なしでは読めませんっ! pic.twitter.com/wsfscjkttg
— 韓国TVドラマガイド (@kankoku_tvguide) September 21, 2023
まずは「赤い袖先」が生まれたきっかけから!
原作小説(韓国版は全2冊・日本版は全3冊)
小説のインスピレーションを受けたとされる水原(スウォン)
イ・サン=正祖(チョンジョ)が、亡き父=思悼(サド)世子のために建てた水原華城(ファソン)があります。
世界遺産にも指定されており、観光などで訪れた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「聖君」、「明君」として名を残す正祖(チョンジョ)
作者のカン・ミガンさんも、築城当時の様子や父を想うイ・サン=正祖の気持ちに思いを馳せたのではないかと感じます。
当然のように小説「赤い袖先」もイ・サン=正祖の時代を描いたものです。
幼少期から少年へ、そして青年期を経て壮年期へ。
王位を継げなければ、生き残ることもできなかったであろう生涯を、彼がただ一人自ら選び欲した女性の姿を通して描いています。
舞台となる時代
序章は、1764年・甲申(きのえさる)の秋から始まります。
サンが生まれたのが1752年ですから、12歳になるかならないかの頃。
1つ年下のドギムは11歳。
まだお互いの存在を知らない時です。
別の見方をすれば、第21代国王・英祖(ヨンジョ)によって、サンの実父・思悼(サド)世子が死に至る痛ましい事件の2年後。
我が子の死を願い出ることで、孫サンの命を救った暎嬪(ヨンビン)李(イ)氏が亡くなり、出宮の時を待つ場面でもあります。
そこから「赤い袖先は実話?史実と実在した人物・時代背景を徹底紹介!」でも紹介したように、廃世孫や暗殺の危機を乗り越え、第22代国王・正祖(チョンジョ)として即位。
政治手腕を発揮する一方で、意中の女性には不器用な姿で登場。
長い年月を経て、ようやく国王とその側室として二人は結ばれます。
最終章では、すでにドギム、のちの宜嬪(ウィビン)成(ソン)氏は旅立ち、49歳となった正祖(チョンジョ)の様子が描かれています。
主な登場人物(上中下巻)
王族
- イサン=正祖(チョンジョ)
- 祖父:英祖(ヨンジョ)
- 祖母:貞純(チョンスン)王后・金(キム)氏
- 側室:淑儀(スギ)文(ムン)氏
- 実祖母:義烈宮(ウィヨルグン)=暎嬪(ヨンビン)李(イ)氏
- 実父:荘献(チャンホン)世子=思悼(サド)世子(故人)*この記事内では思悼(サド)世子と表記します
- 実母:恵嬪(ヘビン)洪(ホン)氏
- 妹:清衍(チョンヨン)郡主(クンジュ)
- 妹:淸璿(チョンソン)郡主(クンジュ)
- 母系大叔父:ホン・イナン(ジョンヨ)
イ・サンの妃・側室
- 孝懿(ヒョイ)王后・金(キム)氏
- 宜嬪(ウィビン):ソン・ドギム=成徳任
- 元嬪(ウォンビン)洪(ホン)氏
- 和嬪(ファビン)尹(ユン)氏
王族以外
- 洪国栄(ホン・グギョン/ドクロ)
- ソ・ミョンソン(ゲジュン)
駙馬(ふば):王女=郡主の夫
- 光恩副尉(クァンウンプウィ)=キム・ドソン
- 興恩副尉(フンウンプウィ)=チョン・ジェファ
内官・女官
- イ・ユンムク:サン付きの内官
- 提調尚宮(チェジョサングン)チョ氏
- ソ尚宮
- キム・ボギョン
- ぺ・ギョンヒ
- ソン・ヨンヒ
- カン・ウォレ
ドギムの家族
父
- ソン・シク
- ソン・フビ
ほぼドラマ「赤い袖先」と同じです。
異なる点も含め、次章以降で詳しくお伝えします。
赤い袖先の原作(小説)とドラマの違い~人物編~
まずは登場人物から!
原作小説には登場しないメンバー
■和緩(ファワン)翁主と鄭厚謙(チョン・フギョム)
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
父・英祖(ヨンジョ)の寵愛を頼りに、たびたび世孫サンを苦しめる和緩(ファワン)翁主。
それをサポートする養子・鄭厚謙(チョン・フギョム)
どちらも実在の人物ですが、小説には名前以外登場しません。
■カン・テホ
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
ドラマの中では、緊張する場面を和らげるサンの護衛カン・テホ。
サンが心許せる数少ない人物でした(恋の手ほどきもしていましたね)
世孫、そして国王となるイ・サンなので、当然護衛はいますが、小説では主要人物として登場することはありません。
原作小説のみ登場する人物
■孝懿(ヒョイ)王后・金(キム)氏
ドラマでは側室ドギムの懐妊がわかった日に、サン=正祖(チョンジョ)が子どものいない王妃を気遣う場面で、匂わせ程度の登場だった正室。
小説では、その容姿に関する描写から、貞純(チョンスン)王后や恵嬪(ヘビン)からの世継ぎのプレッシャーなどなど、多数の場面で登場します。
■ドギムの父
小説では私通の疑いをかけられたドギムが、兄シクの名前を出すときに「ソン氏ユンウの息子」と語っています。
また、恵嬪(ヘビン)の実家で使用人をしていたことから武官になったこと、のちに思悼(サド)世子に仕えたことなどが最初の方で語られています。
■ドギムの弟:フビ
ドラマの最終時に登場する、兄シクの息子グンミンに似た描写が小説内にあり
兄に連れられ、見習いから女官になる姉ドギムに会いにくる場面・結婚の話などで数回登場
原作小説で設定が異なる人物
■イ・ユンムク
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
サン付きの内官は、ドラマでは名前が明記されていませんでした。
小説内では「ユンムク!」とサン=正祖(チョンジョ)から名前で呼ばれています。
■提調尚宮(チェジョサングン)チョ氏
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
ドラマでは、英祖(ヨンジョ)の側室になれると思っていたのに、別の女官=のちの暎嬪(ヨンビン)が寵愛を受けたことの恨みから数々の企てをする人物。
左議政のホン・イナン(ジョンヨ)とも縁故のような場面もあり、また、カン・ウォレが姪という設定でした。
小説では、ホン・イナン(ジョンヨ)やカン・ウォレとの絡みはなし。
英祖(ヨンジョ)の寵愛を受けられなかった代わりに、提調尚宮の地位を得たことが明記されています。
その地位を利用して私腹をこやしていたことから、即位した正祖(チョンジョ)によって財産を没収され、宮廷から出される人物です。
■兄ソン・シク
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
ドラマでは、離れ離れになって暮らしていた兄として登場。
ドギムが刺殺団ウォレの仲間と勘違いされた場面で助けに入る、武芸に優れた妹思いの人物。
小説では、身分が高い人の前では緊張してミスを犯す、たびたび科挙に落ちる「人はよいけれど、頼りにならない」「妹に叱られる」人物として登場。
■光恩副尉(クァンウンプウィ)=キム・ドソン
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
清衍(チョンヨン)郡主(クンジュ)の夫
ドラマでは、サンの即位を支持する同徳会の一員。
英祖(ヨンジョ)も後ろ盾の少ないサンを支えることを期待する人物のひとり。
小説では、清廉潔白な超堅物。
女性の扱いなどには気が回らず、清衍郡主がドギムに苦しい胸のうちを吐露する場面も。
■興恩副尉(フンウンプウィ)=チョン・ジェファ
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
淸璿(チョンソン)郡主(クンジュ)
ドラマでは、短気という面があるものの、サンの即位を支持する同徳会の一員。
英祖(ヨンジョ)も後ろ盾の少ないサンを支えることを期待する人物のひとり。
小説では、女遊びの派手な人物。
淸璿郡主が、夫の度重なる浮気話にやつれてしまう場面も。
■淑儀(スギ)文(ムン)氏
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
ドラマでは、英祖(ヨンジョ)の寵愛をかさに来て、繰り返し廃世孫の企てを行う人物。
サンが正祖(チョンジョ)として即位したのち、登場場面なし。
小説では、正祖(チョンジョ)即位後に、その存在が多くの目にさらされる人物。
側室時代に贅沢な暮らしをしていたことなどから、最後まで、わめき散らしながら、ほぼ身一つで宮廷から出される。
その様子は白髪の老婆として描写されている。
その他:基本的にドラマも小説も同じ設定
■ソ尚宮:宮女見習いの頃からドギムを見守る人物
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
ソ・オクグム。
恵嬪(ヘビン)の遠縁で、父に連れられやってきたドギムの師となる。
ドラマでは、お名前までは明かされることなくソ尚宮として登場。
小説では、恵嬪(ヘビン)の居所でドギムに引き合わされます。
ドギムの友人たち
小説ではさらに詳細な人物像やストーリーが描かれる
■ぺ・ギョンヒ
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
訳官の娘で裕福。美人。
最初は周りの宮女(見習い)たちが声をかけるが、気が強く思ったことを口にするので、友達がいない。
手先が器用で、針房(チムバン)に所属。
ボギョンとは対照的で、顔を合わせればケンカする(喧嘩するほど仲がよいの見本)
■キム・ボギョン
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
熊のような容姿!(という小説での設定)不器用だが、心の優しい人物。
力があり、洗踏房(セダッバン)に所属。
■ソン・ヨンヒ
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
ドギムたち4人の中で、最も大人しく”存在感のない”人物。
ギョンヒとは遠縁にあたる。
心を寄せる人物がおり、それを知ったドギムから「命取りになる」と釘を刺されている。
洗手間(セスッカン)所属。
次に、ドラマ・原作内での出来事について見ていきます。
赤い袖先の原作(小説)とドラマの違い~出来事編~
主だったものを紹介します。
幼いサンとドギムの出会い
ドギムとサンの出会いのシーンは本当に美しくて好き。百想芸術大賞では芸術賞(美術チーム)もノミネートされてます!正統派時代劇にふさわしい衣装へのこだわりや照明等演出に相当力を入れているのがわかります🌺#赤い袖先#袖先赤いクットン#옷소매붉은끝동 pic.twitter.com/rVduC6ZgcK
— ひーちゃん👓🍒 (@hitomi3_1) April 16, 2022
ドラマでは、暎嬪(ヨンビン)の遺体が安置されている宮へと向かう途中で出会う。
後悔の涙を流すサンをドギムが慰める。
小説では、実父である思悼(サド)世子が亡くなってから塞ぎがちで、本ばかり読む我が子を心配した恵嬪(ヘビン)によって引き合わされる。
明るく物怖じしないドギムによって、久しぶりにサンが笑顔を見せる。
英祖(ヨンジョ)との出会い
ドラマでは、暎嬪(ヨンビン)に挨拶をするため東宮殿を抜け出してきたサン(と言っても、ドギムは世孫の陪童のひとりだと思っている)を先に逃し、英祖(ヨンジョ)と対面することになります。
小説では、広い宮中で道に迷った宮女見習いのドギム。
偶然入った建物が、暎嬪(ヨンビン)の安置場所だったという設定です。
そこで英祖(ヨンジョ)に会い、利発な彼女を気に入った国王が内官を通して『女範』を下賜するという流れです。
最初の承恩(スンウン)
ドラマでは描かれない場面。
「世孫サンが、女官の誰かに思いを寄せている*」という噂から、母・恵嬪(ヘビン)がドギムを東宮=世孫の居所へ配置する。
*ドギムのことを知りたいと周囲に尋ねたサンの言動
満月の夜に会った二人。
サンは誰にも打ち明けることのできない、自分の苦しい立場などを(お酒の勢いもあり)ドギムに吐露する。
その後、「お前の服の紐を解いたら・・・」と承恩を与えようとする。
ドギムはその申し出を拒否(本来、宮女は拒否できない)その理由として「正妃(この時は、世孫嬪)が世継ぎを生んでいないのに、一女官が寵愛を受けることは出来ない」と答える。
この部分は、史実として伝えられている話をベースに描かれたようです。
ただ一人の女人
ドラマでは、英祖(ヨンジョ)がサンと釣りをしながら聞かせる台詞。
「ただ一人でよい。本心を打ち明けられる女性をそばに置くように。」
小説では、生前の暎嬪(ヨンビン)が孫サンに聞かせた話。
最初の承恩も、祖母の言葉を思い出し、自分にとってドギムが “たった一人の女人”になるのでは…という思いで、サンが申し出る。
禁書
ドラマでは、第2話「禁止されている『史記』を隠し持ち、読んでいたサン」の場面。
小説では『網目=資治通鑑網目(しじつうかんこうもく)』
この本を読んだとサンが口にしたため、英祖(ヨンジョ)が本を持ってくるように命じる。
ホン・グギョン/ドクロが機転をきかし、ドギムが書庫整理のために手に持っていた『網目』から該当ページ*を破り、内官に渡す。
このことで、サンはいっそうホン・グギョン/ドクロに信頼を寄せる。
*『網目』にある「爾母婢也:あなたの母は召使いである」部分
即位と権力
ドラマでは、サンの代理聴政、そして即位を妨げようと、さまざまな企みが繰り広げられます。
小説では、ホン・イナン(ジョンヨ)による横槍が入る場面はあるものの、「英祖(ヨンジョ)が認知症になる」「”金縢之詞(クムドゥンジサ)”の隠し場所」のようなストーリーはありません。
老齢になった英祖(ヨンジョ)が崩御。
「25歳の若き王が誕生した」と物語が進みます。
即位後、正祖(チョンジョ)となったサンは、ホン・グギョン/ドクロに高位の官職を与え、権力を集中させます。
そこで、提調尚宮(チェジョサングン)は財産没収のうえで追放。
淑儀(スギ)文(ムン)氏ことコ・ソホンの身分を剥奪し、宮廷から追放。
さらに、ホン・イナン(ジョンヨ)の免職や貞純(チョンスン)王后の兄の都からの追放など、厳しい処分を実施します。
*この辺りは、ドラマでは描写が省略された部分
サン=正祖(チョンジョ)暗殺の企て
ドラマでは何度か描かれた暗殺未遂事件。
小説では、史実にもある即位翌年に賊が宮殿に忍び込んだ場面が描かれています。
捜索のときに、ドギムがウォレと組むのは小説もドラマも同じ。
草むらが怪しいと感じるドギムをウォレが遠ざける(彼女の命を救うため)のも同様です。
ドラマでは、提調尚宮(チェジョサングン)チョ氏の意志を継いだウォレらが賊を手引きしたとして捕まり処刑されます。
小説では、逆賊が宮殿に忍び込む助けをしたのは、ウォレの父で護衛官のカン・ヨンフィ。
ウォレはその手助けをしたとして親子で連行されます。
背後にサンの異母弟・恩全君(ウンジョングン)を担ぐ動きがあった、という史実ベースの箇所も描かれています。
さらに5年後の話として、側室となった宜嬪(ウィビン)=ドギムの願いをきいた正祖(チョンジョ)が、ウォレを奴婢の身分に落とすことで牢から解放します。
孝懿(ヒョイ)王后と元嬪(ウォンビン)の関係
ドラマ「イ・サン」では、しきたりを守らず孝懿(ヒョイ)王后と対立する元嬪(ウォンビン)の姿が描かれていました。
「赤い袖先」では、王妃の登場場面もなく元嬪が亡くなってしまうので、ホン・グギョン/ドクロが「妹が王妃のせいで亡くなった」とするには、話が飛躍した感があったのではないでしょうか。
小説では、その過程が描かれています。
そもそも”出来レース”だった揀択(カンテク)
前例を無視するような好待遇(世継ぎを産む前から側室に与えられた嬪の身分/最高の意味をもつ元の字など)
盛大な婚礼儀式
これらに加え、世継ぎどころか子どものいない正室として、肩身の狭い思いをしていた孝懿(ヒョイ)王后が元嬪(ウォンビン)の挨拶を拒むことから、ふたりの難しい関係が始まります。
*「どうして挨拶を受けるようになるのか?」その部分も原作に描かれています
その後も、王妃と側室の関係は改善しません。
兄であり、時の権力者ホン・グギョン/ドクロも絡むことで、悪化の一途をたどるばかり。
幼い元嬪(ウォンビン)には、何事もないかのように振る舞うこともできません。
さらに、恵嬪(ヘビン)からの世継ぎに向けた大きすぎる期待に、次第に追い詰められていくのです。
ドラマでは、貞純(チョンスン)王后が、わがままの度を越した和緩(ファワン)翁主を叱責する理由を見つける場面となった親蚕礼(チンジャムネ)
小説では、孝懿(ヒョイ)王后が元嬪(ウォンビン)を叱責する理由を見つける場面として描かれています(その責任の一端は、兄ホン・グギョン/ドクロにあり)
こうして徐々に活力を失っていく元嬪。
床に伏せることが続き…とうとう帰らぬ人となってしまいます。
その後「王妃が元嬪に毒を飲ませた」という噂が出たり、中宮殿=王妃の居所の宮女たちが姿を消す*など不穏な出来事が続きます。
*ドラマでギョンヒが(ホン・グギョンの配下の者に)連れ去られた事件
見方によっては、ホン・グギョン/ドクロの横暴さとこじつけでもあるのですが、このような背景を描くことで「なぜホン・グギョンは、宮女たちを密かに捕え、王妃に罪を着せようとしたのか」がわかるようになっています。
ヨンヒの恋
ドラマでは、友人たちも寝耳に水だったヨンヒの恋愛と流産。
小説では、ドギムがヨンヒの恋に気がつきます。
大殿=王の居所の別監(ピョルガム)が相手であること、文を交わしていることを知り、やめさせようとするのです。
※宮女は(建前上)王を夫とするので、他の男性との恋愛は厳罰処分の対象
ヨンヒの恋愛については、ギョンヒやボギョンは知りません。
その秘密を知っていたドギムが、その後さまざまな出来事に巻き込まれ、ヨンヒの様子を気にかけるどころではなくなってしまいます。
結末は…ドラマ同様にヨンヒが流産して恋愛が発覚。
ヨンヒは罰を受ける前に、亡くなってしまいます。
別離と再会
ギョンヒの行方を探す過程で、サン=正祖(チョンジョ)ではなく貞純(チョンスン)王后を頼ったドギム。
本の間に手紙をはさみ渡そうとするやり方もドラマ、小説ともに同じです。(詳細部分には違いあり)
そんなドギムの選択に傷ついた正祖(チョンジョ)は、彼女を宮廷から追い出します(ドラマ・小説とも)
ここから先の流れはドラマと小説に違いがあり…
ドラマでは、幼い頃から宮中で育ったドギムが困らないよう、妹・清衍(チョンヨン)に託したのはサン=正祖(チョンジョ)
小説では、恩彦君(ウノングン)の私邸で働けるよう口利きをしたのは、貞純(チョンスン)王后。
余談ですが、恩彦君は完豊君(ワンプングン)の実父。
完豊君は、ホン・グギョン/ドクロが亡き妹元嬪の養子にした子ども。
史実とも相まって、複雑なお屋敷に勤めることになったドギムです。
その後、次の側室=和嬪(ファビン)尹(ユン)氏が決まり、宮中のしきたりに詳しいドギムが和嬪に仕えるという名目で宮廷に呼び戻されます。
ここでも、手を回したのが貞純(チョンスン)王后。
それを恵嬪(ヘビン)が後押しした形です。
実は、サン=正祖(チョンジョ)もドギムを戻す理由が欲しくて、祖母=貞純(チョンスン)王后の願いをかなえた形で受け入れます。
ドラマでは、母・恵嬪(ヘビン)がドギムを推薦した流れでした。
正祖(チョンジョ)が宮女ドギムを目で追ってしまうのも、和嬪の嫉妬から始まる一連の事件*も、ドラマ・小説ともほぼ同じ。
ただ、和嬪の意地悪があったことで、正祖(チョンジョ)とドギムが結ばれるのですから、ある意味恋のキューピッドだったのかもしれませんね。
*「赤い袖先は実話?史実と実在した人物・時代背景を徹底紹介!」
台詞「私は思悼(サド)世子の子である」の項目参照
想像妊娠
ドラマでは描かれなかったのが、和嬪(ファビン)の偽胎=想像妊娠。
出産に備え、万全の体制を整えたのですが…予定日を過ぎても生まれる気配はまったくありません。
史実でも、出産に備えた産室庁(サンシルチョン)が設置されたものの出産、流産の記録がなく”想像妊娠”だと考えられています。
小説の終盤では、孝懿(ヒョイ)王后の想像妊娠について描かれた箇所があります。
世継ぎを生む、というプレッシャーがどれだけ大きかったのかが伝わる場面です。
繫馬樹(クェマス)
*繫は繋の旧字体
ドラマの中で、宜嬪(ウィビン)=ソン・ドギムの居所となった別宮に、花を咲かせることが稀な木があったことを覚えていますか?
小説では、この木の由来が詳しく述べられています。
第16代国王・仁祖(インジョ)の父がよく馬を繋いでいたことから、繫馬樹(クェマス)と呼ばれる棗の木です。
枯れた木から枝が生えてきた時に王子が生まれた、その次に枝が生えた時に英祖(ヨンジョ)が即位した…と”大変縁起のよい木だ”と正祖(チョンジョ)は考えています。
サンがドギムを誘ってその木を見に行くと、新しい枝だけでなく黄色い花が咲いています。
吉兆だと喜ぶサン=正祖(チョンジョ)その時、ドギムのお腹を赤ちゃんが蹴るという場面。
和嬪(ファビン)の想像妊娠とは異なり、予定より早くドギムは男の子を出産します。
31歳になって初めて我が子、しかも男の子を抱き、正祖(チョンジョ)は大喜び。
それまでの気難しい国王から、子煩悩な父の顔をみせる場面が何度もあります。
とはいえ、史実は別の記事でも述べたように残酷です。
待望の男の子・㬀(スン)が生まれ、元子(ウォンジャ)、そして世子(セジャ)に冊封された喜びも束の間…聡明な㬀が誕生を待ち望んだ妹=翁主は夭逝。
そして、文孝(ムニョ)世子は麻疹(はしか)でこの世を去り、次の子どもがお腹にいた宜嬪(ウィビン)まで、その後を追うようにして正祖(チョンジョ)のもとを去ってしまいます。
そんな悲しみを和らげてくれるのが、日本語版では下巻に収められたエピソードの数々。
その中から印象的な場面をご紹介します。
春紫苑(はるじおん)の花
ドラマとは違い、好きな人の前では口下手な正祖(チョンジョ)
宜嬪(ウィビン)がいないところで、父と息子の内緒話のように彼女を春紫苑の花にたとえます。「いくら見ても飽きないし、見れば見るほど美しいので」と。
この内緒話、幼い文孝(ムニョ)世子が”大好きな母”に話してしまうのですが。
そして、世子も一番好きな花が春紫苑だと言い、母に花で作った指輪を贈ります。
宜嬪(ウィビン)が世を去り、その悲しみを忘れるように政治に没頭する晩年の正祖(チョンジョ)
彼が愛する人の面影を見出す場面が、最終話に描かれています。
武芸試験の様子を間近でみる正祖(ドラマでも、カン・テホが自慢気に選りすぐりの兵たちを見せる場面がありますね)
少し小柄な武官が馬蹄に踏まれた草を整えている様子に驚き、手にしていた器を落とします。
よく見ると、草ではなく春紫苑の花。
それを整えるのは、あの人によく似た男性。
それは、宜嬪(ウィビン)=ドギムの末の弟フビでした。
ドラマでは、ひときわ優れた武官が目につき呼び寄せると、ドギムの兄シクの息子グンミンだったとして描かれています。
膝枕
正祖(チョンジョ)と宜嬪(ウィビン)が家族として幸せな日々を過ごしていた頃、彼女の膝枕で眠る場面(ドラマ)を覚えている方も多いことでしょう。
出典:http://program.imbc.com/redsleeve
この後、夢から覚めた正祖(チョンジョ)がハッとするシーンがありましたね。
この場面は、正祖(チョンジョ)の最期(と思われる)にも登場します。
小説では、この膝枕シーンは正祖(チョンジョ)だけでなく、文孝(ムニョ)世子も並んで眠っているのです。
最初は幸せな家族としての場面で、次は正祖(チョンジョ)の最期の場面で。
夢の中なのか、あの世で再び家族として過ごす時間なのでしょうか…
「赤い袖先」下巻より
『私を愛してくれ』
彼女を強く抱きしめた。
にこやかに笑う彼女だけがいた。
サンは彼女に微笑んだ。
そして、時間は永遠となった。
こうして、史実は必ずしもハッピーエンドとして描くことのできないサンとドギムの物語は、幸せな瞬間が永遠となり読者の心に残ります。
次に、「赤い袖先」の原作の、私なりの感想を述べてみたいと思います。
赤い袖先の原作(小説)の感想
細やかな人物描写と喜怒哀楽の表現によって、時代を超えて登場人物たちが目の前にいるような感覚になります。
怖いもの知らずで、イタズラ好きのドギムが、自分の心に素直に友情を築いていく場面。
その聡明さと相手の気持ちを汲み取る細やかさで、英祖(ヨンジョ)だけでなく、大妃=貞純(チョンスン)王后も恵嬪(ヘビン)も惹きつけてやまない様子。
ひとことで言えば、型破りなヒロインなのです。
家門に従い、夫に従うのがよしとされた時代に、最後の瞬間まで「自分が自分であること」を模索するドギム。
だからこそ、現代に生きる私たちも彼女の生き方に共感を覚え、ともに悩み、答え探しをする気持ちになるのだと思います。
また作者のカン・ミガンさんが、史実あるいは史実として伝えられるエピソードをふんだんに盛り込んで人物を描き、出来事を見せてくれるので、自然な流れで話が進んでいきます。
フュージョン時代劇とは一線を画す小説だと思います。
最後に、外伝として描かれた部分にも触れながら、この記事を終えたいと思います。
赤い袖先の原作(小説)をネタバレ!~まとめ~
聖君・正祖(チョンジョ)の業績や、偉大なエピソードを中心に描くのではなく、「不器用ながら一人の女性を愛し続けた国王と、愛する人が一人の男性ではなく国王であるが故に、最後の言葉を隠し続けた女性の愛の物語」が、この「赤い袖先」です。
変えることができない歴史を前に、どう描いていくのか…
想像ではなく、さまざまな記録が正祖(チョンジョ)が愛したのはただ一人、宜嬪(ウィビン)成(ソン)氏こと成徳任(ソン・ドギム)だったと示していること。(決して、王妃や他の側室を蔑ろにしたという意味ではなく、自らの意思で選び愛し抜いた女性という意味)
その女性と、彼女との間に生まれた子どもたちが、自分より先に旅立ってしまう事実。
「家族が仲睦まじく、末長く幸せに暮らしました」と描けない分、二人の愛が成就するまでのすれ違いと衝突すら丁寧に描いているのだと感じます。
そして、小説だからできること。
それは別の形の終わり方を読者に届けることです。
「外伝」というスタイルで、もし・・・と願わずにいられない夢の物語が綴られます。
この部分までネタバレしてしまうと読む楽しみがなくなるので、「外伝」はぜひご自身の目でお確かめください。
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冬ソナブームの頃には興味がなかった韓ドラにハマって数年。
時代劇が好き。
そして復讐ドロドロ系にツッコミを入れたり、ラブロマンスにときめいたりの毎日です。
読み書きは今ひとつの耳だけハングルなので、最初に覚えた韓国語は、
「~씨(~ッシ)」「아이고(アイゴー)」「어머(オモ)」の3つ。
連絡先:whitelife112226@gmail.com