赤い袖先は実話?史実と実在した人物・時代背景を徹底紹介!事実が再現されたシーンが次々と明らかに!
冬ソナブームの頃には興味がなかった韓ドラにハマって数年。
時代劇が好き。
そして復讐ドロドロ系にツッコミを入れたり、ラブロマンスにときめいたりの毎日です。
読み書きは今ひとつの耳だけハングルなので、最初に覚えた韓国語は、
「~씨(~ッシ)」「아이고(アイゴー)」「어머(オモ)」の3つ。
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出典:http://program.imbc.com/redsleeve
カン・ミガンさんの小説「赤い袖先」をベースに制作された同名ドラマ「赤い袖先」
この作品で初めてイ・サンこと正祖(チョンジョ)の時代を目にした方もいれば、「イ・サン」をすでにご覧になった方、「イ・サン」ファンの方もいらっしゃることでしょう。
今回はドラマで描かれたストーリーの中で、史実に基づいたと思われる部分を中心に紹介します。
2010年「イ・サン」制作時には知られていなかった事柄もありますので、どうぞお楽しみください。
もくじ
赤い袖先は実話?史実と実在した人物・時代背景を徹底紹介!
華城市 建陵
水原華城を造った正祖の王陵は見ることができた。よかった。#朝鮮王陵遠征隊 pic.twitter.com/fAXTRKz6cC— りうめい (@liumeiuru) August 24, 2023
まずは、登場人物から。
※実在名と役名が同じ人物を挙げています
実在した人物(王族)
- イサン=正祖(チョンジョ)
- 祖父:英祖(ヨンジョ)
- 祖母:貞純(チョンスン)王后・金(キム)氏
- 側室:淑儀(スギ)文(ムン)氏
- 実祖母:暎嬪(ヨンビン)李(イ)氏
- 実父:思悼(サド)世子(故人)
- 実母:恵嬪(ヘビン)洪(ホン)氏
- 妹:清衍(チョンヨン)郡主(クンジュ)
- 妹:淸璿(チョンソン)郡主(クンジュ)
- 父系叔母:和緩(ファワン)翁主
- 母系大叔父:ホン・イナン(ジョンヨ)
実在した人物(側室)
- 宜嬪(ウィビン):ソン・ドギム=成徳任
- 元嬪(ウォンビン)洪(ホン)氏
- 和嬪(ファビン)尹(ユン)氏
実在した人物(王族以外)
- 洪国栄(ホン・グギョン/ドクロ)
- 鄭厚謙(チョン・フギョム)
- ソ・ミョンソン(ゲジュン)
駙馬(ふば):王女=郡主の夫
- キム・ドソン
- チョン・ジェファ
注:原作小説やドラマにも登場する、サン付きの内官、当時の提調尚宮(チェジョサングン)、ドギムの師である尚宮や友人たち、兄も実在する
(執筆時点で実名と役名が同じであるかわからないため、ここでは扱わない)
こうしてみると、主だった人物は実在した方々だと分かりますね。
時代背景
午前中に昌慶宮へ
ここは英祖も正祖も生活してたところ。
景春殿はイサンが生まれた産室。
迎春軒はイサンが本を読んだり過ごしたところでここで亡くなったそうです。イサンの話であってジュノではない😂#韓国旅行 #ソウル pic.twitter.com/CjLprYDIpC
— LeeMaru(イマル) (@LeeMaru0125) July 18, 2023
幼いころ、実の父・荘献(チャンホン)=思悼(サド)世子の徐々に正気を失っていく姿を見続けたこと。
さらに、祖父でもある英祖(ヨンジョ)によって父が死を命じられたことで、周囲の人へ心を閉ざすことになったイ・サン。
謀反を企んだ「罪人の息子」という不名誉なレッテルを貼られます。
そのため、英祖(ヨンジョ)はサンを亡き孝章(ヒョンジャン)世子の養子にすることで、王位の正当性を守ろうとしたのでした。
また、自分たちの思いどおりにならない世孫と知った大叔父・ホン・イナン(ジョンヨ)や叔母・和緩(ファワン)翁主らの企みによって、たびたび廃世孫の危機に陥るのです。
笑顔を見せることもなく、常に緊張を強いられているサンの前に現れたのは…明るく物怖じすることなく、自分の意見を述べる宮女見習いのドギム。
父の二の舞にはならないと宮女たちを遠ざけていたサンですが、次第に彼女に惹かれていくように…
続いて、史実が描かれている場面を紹介します。
※ここでの話数は、オリジナル韓国版を元にしたものです
赤い袖先は実話?史実と実在した人物・時代背景を徹底紹介!~ドラマとの比較編~
まずは廃世孫の危機から!
廃世孫の危機
第2話「禁止されている『史記』を隠し持ち、読んでいたサン」
反世孫派によって、英祖(ヨンジョ)の怒りを買った幼いサンが危機に陥る。
※「禁書」の話は、英祖(ヨンジョ)が実母=淑嬪・崔(スクビン・チェ)氏の身分が低いことで苦労したことをベースに創作されたと考えられる
第3話「兵を動かしたことが謀反にあたる、と追求されるサン」
反世孫派によって、実父・思悼(サド)世子と同じ嫌疑をかけられる。
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第5〜6話「妓房でうつつを抜かしている、と幽閉の罰を受けるサン」
反世孫派によって、サンが秘密裏に行う同徳会の集まりのことを「政をおろそかにしている行動」だと英祖(ヨンジョ)に告げ口される。
これはサンに代理聴政を行わせないために仕組まれた。
幽閉されたサンを慰め、元気づけるためにドギムが『詩経』を読む場面がありますね。
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ドラマで描かれる場面は創作ですが、イ・サンは幼い頃から「いつ身分を失うかわからない」「心休まる時がない」「周りに信用できる人がいない」という環境のなかで育ったと言われています。
弓の名手・サン
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第2〜3話「都に虎が現れ人々に被害が出たため、王命を待たずにサン自ら弓を手に退治する」場面。
虎退治はドラマ上の演出ですが、イ・サン=正祖(チョンジョ)が弓の名手であったことは記録にも残されています。
恵嬪(ヘビン)洪(ホン)氏の縁で宮女見習いへ
休暇で実家に帰る宮女見習い。
ドギムが訪ねたのは、サンの実母・恵嬪(ヘビン)の屋敷。
ドギムの父が恵嬪(ヘビン)の夫=思悼(サド)世子に仕えていたことから、両親が亡くなった後のドギム兄妹を支えたのが恵嬪(ヘビン)であったという場面。
脚色がいくつかあるものの、ドギムの父が恵嬪(ヘビン)洪(ホン)氏の家と縁があり、そこから宮廷に入ることになったのは事実です。
イ・サン暗殺の企て
第9〜10話。提調尚宮(チェジョサングン)チョ氏をトップとする秘密組織”廣寒宮(クァンハン)”によって、稜幸(ヌンヘン)のため宮廷を離れるサンの暗殺が企てられる。
ドギムの機転により、サンたちはかろうじて暗殺団を撃退する。
※宮女たちの秘密組織や暗殺団は、ドラマ上の創作です
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第11話では、王宮での宴を利用してサンの命を狙う企みが。
提調尚宮(チェジョサングン)チョ氏にそそのかされた和緩(ファワン)翁主。
英祖(ヨンジョ)のために準備された料理を”ケジャン(カニの醤油漬け)”と”柿”の組み合わせにすり替える。
宴会の準備をした責任がサンにあるとして、窮地に陥らせる。
※宴会の場面はドラマ上の演出ですが、”ケジャン(カニの醤油漬け)”と”柿”の組み合わせは、「英祖(ヨンジョ)が王位を狙って兄である景宗(キョンジョン)を毒殺するために用いたと噂された」食べ物
続く第12話。ホン・イナン(ジョンヨ)と提調尚宮(チェジョサングン)チョ氏によって、サンの支持組織”同徳会”の名簿が謀反の証拠として提出される。
病により混乱している英祖(ヨンジョ)は、サンを思悼(サド)世子だと思い込んでしまう。
間一髪のところで、貞純(チョンスン)王后・金(キム)氏とドギムによって”金縢之詞(クムドゥンジサ)”の隠し場所を思い出す英祖(ヨンジョ)
これにより、命の危機から一転、サンの王位正当性が周知される。
第13話では、国王となったサン=正祖(チョンジョ)襲撃される事件が発生。
提調尚宮(チェジョサングン)チョ氏の姪・ウォルへらが加担しており、捕まえられる。
さらに、その後の取り調べで襲撃の背後にサンの異母弟・恩全君(ウンジョングン)を担ぐ動きがあったことが明らかになる。
※襲撃の様子は原作小説に基づいた部分、また、ドラマ上の演出。
ただし、即位した翌年の1777年7月と8月に寝殿、そして警備強化のため居所を移した昌徳宮(チャンドックン)に刺客が現れたことは史実です(軍官などの内通者が多数捕えられた、と伝えられています)
※正祖(チョンジョ)は最後まで恩全君(ウンジョングン)の命を守ろうとしたが、最終的に死罪を命じた
このように元々支持基盤が弱く、彼を罪人の息子だと言う者が多かったイ・サン。
世孫時代から、即位した後まで命の危機に瀕することが多々あったと伝えられています。
承恩(求婚)を断るドギム
第13話。「家族になりたい」とドギムに側室となってくれるよう求婚するサン=正祖(チョンジョ)。
しかし、ドギムは首を縦に振りません。
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視聴者にとっては、お互いを思う気持ちはあるのにめでたし…とはならず、ヤキモキする場面ですね。
実際に宜嬪(ウィビン)成(ソン)氏=徳任は、サンからの承恩を断り続け、15年もの時を経て受け入れたと伝えられています。
サン=正祖(チョンジョ)の側室たち
正室である孝懿(ヒョイ)王后・金氏との間に子供が生まれなかったため、まず元嬪(ウォンビン)洪(ホン)氏が側室として選ばれます。
その元嬪が入宮後1年で亡くなり、次に選ばれたのが和嬪(ファビン)尹(ユン)氏でした。
※元嬪も和嬪も身分の高い家柄であったことから、世継ぎを産む前から「嬪」の位を与えられた
ドラマでは、和嬪が自分の侍女ドギムに向けるサン=正祖(チョンジョ)の眼差しに嫉妬。
かつて至光(チミル)尚宮だったドギムに洗濯を命じる*などの意地悪をして、サンの怒りを買うことに。
*通常、至光尚宮は洗踏房(セダッバン)のような重労働はしない
洪国栄(ホン・グギョン/ドクロ)の野心と失脚
話が前後しますが…陪童(ペドン)として、幼いサンの側にいるホン・グギョンことドクロ。
彼に対しても、サンはなかなか心を開こうとしません。
第2話「禁止されている『史記』を隠し持ち、読んでいたサン」(前述)で、彼の窮地を救った*ことから絶大な信頼を勝ち得ます。
*この場面、本当にサンを助けたのは”幼いドギム”でしたね
見目麗しく、女官たちの憧れの的でもあるドクロ。
しかしドギムだけは、彼の野心を感じ取り、距離を置こうとします。
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常にサンの側に控え、世孫また国王という立場では動きづらい裏の部分を担ううちに、彼の身分は誰もが越えられないくらい強大になっていきます。
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妹をサン=正祖(チョンジョ)の側室に据え、名実ともに権力者となるホン・グギョンことドクロ。
しかし、側室となった元嬪(ウォンビン)が入宮後1年足らずで逝去。
妹の死を孝懿(ヒョイ)王后の責任とするために画策。
それまでも目に余る言動はあったものの、見逃してきた正祖(チョンジョ)によって、辞職という形で宮中から出されることに。
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自分と同じように、正祖(チョンジョ)によって宮中から追われたドギムが、再び宮女として戻ることへのショックを隠しきれません。
その後、死を目前にして心を入れ替えた(?)ドクロは、正祖(チョンジョ)に宛てた手紙の中で、幼い頃サンを救ったのは自分ではなく”宮女見習い”だったと伝えます。(この場面で、サンのセリフにより”ドクロの本名ホン・グギョンの名”が呼ばれます)
ドラマ「赤い袖先」の中では、流刑地で洪国榮=徳老(ドクロ)が亡くなったと伝えられるのみで、最期の場面はありません。
史実では、自他ともに認める正祖(チョンジョ)の右腕・洪国榮=徳老(ドクロ)から権力を奪ったのも、のちに彼を弾劾させたのも正祖(チョンジョ)であったと伝えられています。
1780年に江原道(カンウォンド)へ。
その後、江陵(カンヌン)に流配され、34歳で亡くなったそうです。
台詞「私は思悼(サド)世子の子である」
第16話。和嬪(ファビン)尹(ユン)は、自分にとって王の寵愛を受けるライバルとなるドギムを陥れようと画策。
彼女が私通(形式上、王と結婚したことになる宮女がほかの男性と関係を持つこと)を犯していると貞純(チョンスン)王后・金(キム)氏に訴える。
私通の相手とされたのが、ドギムの実兄シクであることを証明するサンの母・恵嬪(ヘビン)。
しかし和嬪は、ドギム兄妹の父親が”罪人=思悼(サド)世子”に仕えていたことを問題視する。
実の父を目の前で「罪人」と呼んだ和嬪に激怒するサン=正祖(チョンジョ)「私は思悼(サド)世子の子である」と言い渡す。
※この有名な台詞は、正祖(チョンジョ)が即位のときに言ったもの。ドラマ「イ・サン」ではその場面が描かれています。
家族としてのサンとドギム
第16〜17(最終)話。幼いころの出会いから長い年月を経て、ようやく結ばれたサンとドギム。
足繁くドギムのもとへ通うサン。
彼女の懐妊の知らせに喜びを隠せない。
が、長年連れ添いながらも子宝に恵まれない王妃(正室)を思い、知らせを聞いた夜は中殿=王妃の居所へと向かう。
※「赤い袖先」で、孝懿(ヒョイ)王后が唯一登場(セリフ上ですが)するのがこの場面
仲睦まじい二人の間に、待望の子どもが生まれる。
30歳になって誕生した我が子、しかも世継ぎとなる男子が嬉しくてたまらないという様子のサン=正祖(チョンジョ)。
このことにより、ドギムには側室として最高位の「嬪」=宜嬪(ウィビン)が与えられる。
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やがて「元子(ウォンジャ)」そして「世子=文孝(ムニョ)世子」に冊封される「㬀(スン)」。
幸せいっぱいの”家族” (サンはドギムに「家族になりたい」と求婚しましたね)
その幸せは長く続きませんでした。
わずか5歳で麻疹(はしか)により命を失った文孝(ムニョ)世子。
お腹に子どもがおり、麻疹にかかったことのないドギムは、我が子の最期を看取ることが叶いません。
生きる気力を失ったかに見えた宜嬪(ウィビン)成(ソン)氏=ドギム。
お腹の子を守れるのは自分だけだと、再び食事をするようになったのですが…サン=正祖(チョンジョ)が宜嬪の熱に気づいて懸命の治療を行うものの、回復の兆しがみられません。
死を目前にして宜嬪(ウィビン)成(ソン)氏=ドギムが会いたいと願ったのは、サン=正祖(チョンジョ)ではなく、見習いの頃からの友人たち。
そのことにサンは傷つきながらも、愛するドギムを逝かせたくなくて名前を呼び続ける。
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ドラマでは㬀(スン)を亡くし、次の子どもを身籠っているときに逝去する宜嬪(ウィビン)成(ソン)氏=ドギム。
㬀=文孝(ムニョ)世子が亡くなった年に彼女も亡くなるのですが、その間に夭逝した女の子もいたそうです。
政治的なバランス、つまり政略結婚ではなく、サン=正祖(チョンジョ)が「自らの意思で選んだ女性は宜嬪(ウィビン)成(ソン)氏=ドギムただ一人」であったことは周知の事実として知られています。
この後に側室として迎えた綏嬪(スビン)朴(パク)氏は、その見事な料理の腕前で”サンにドギムとの思い出を蘇らせる場面”で名前だけ登場します。
ドラマ「イ・サン」では、ソン・ソンヨンとして登場する宜嬪(ウィビン)成(ソン)氏。
その後、彼女に関する史料がいくつも見つかり
- 本名が成時任(ソン・ドギム)であること
- 父がサンの母・恵嬪(ヘビン)洪(ホン)氏の実家で働いていた縁で、宮女となったこと
- 字が美しいことで知られていたこと
- サンの妹たち、清衍(チョンヨン)・淸璿(チョンソン)郡主(クンジュ)たちと小説を筆写したこと
などが明らかになりました。「赤い袖先」には、このような史実がふんだんに盛り込まれています。
最後に、今回お伝えしきれなかったものの、「赤い袖先」に登場していた史実について、言及しつつ、この記事をまとめたいと思います。
赤い袖先は実話?史実と実在した人物・時代背景を徹底紹介!~まとめ~
登場人物とドラマで描かれた場面を中心に、時代背景を含め、史実をお伝えしました。
サンとドギムが互いに相手を思いながら、それぞれの立場でその思いを封印して物語は進んでいきます。
二人の愛が実るまでの長い年月。
そこに至るまでの数々の危機。
私たちは、もどかしいような、ハラハラするような思いでサンとドギムを見続けたのではないでしょうか。
幼いころの出会いや出来事が伏線として描かれ、後半に回収される流れ、時にはタネ明かしされる形で描かれています。
細かく見ていくと、貞純(チョンスン)王后・金(キム)氏に関する史実も描かれているのですが、これ以上長くなるのも野暮なので、この辺りで結びにしたいと思います。
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